第39回 ~成人式の日に~

こんにちは、筧です。先日、息子の新成人のお祝いに家族揃って夜食事に出かけました。息子から「お父さんの時は、成人式どうだった?」と訊ねられ、成人式は仕事をしていたから出席していないんだよ。」と、久しぶりに当時を思い出しながら話しをしました。二十歳の頃、私は料理人を志していました。見習いとして就職したのは地元の中華料理店。毎日茹だりそうな厨房のなかで、汗だくになりながら働いていました。

成人式の案内をもらったある日、私は店の大将に「今度の祝日、成人式があるのでお休みを頂いてもいいですか?」と申し出ました。すでに同い年のアルバイトスタッフが、休みをもらえたと聞いていたので、自分もすんなり「いいよ。」と承諾してもらえると思っていました。ところが、それを聞いた大将の顔がみるみる険しくなって、「バカヤロウ!飲食業というのはな、人が遊んでいるときに働くんだ。休みの日に自分も休めるなんて、甘いことを考えていて、一人前になんかなれると思うなよ!」と大目玉を食らいました。

奇しくも、その中華料理店は、成人式の会場となる学校の道路を挟んだ向かい側、その並びに位置していたので、成人式の日は朝から仕込みで大忙し、昼も夜も大きな書入れ時だったのです。当日は、ひっきりなしにお客さんがやってきました。厨房で作業をしながら、ふと顔を上げると晴れ着姿の同級生たちが家族や友人を伴って食事に来ているのが目に飛び込んできます。その眩しい光景を見ないように手元に目を凝らして、ぐっと歯をくいしばりながら、鍋を振るってやり過ごしました。

いつもより遅い閉店後の後片付けを済ませ、目まぐるしい一日が終わりました。張り詰めていたものが一気に緩み、すぐ帰る気にもなれず、私は店の裏手でぼんやりと座って休んでいました。すると、大将が顔を覗かせ、私の側にやってきて、「今日はありがとな。今度の休みにこれを着てどこか遊びに行ってこいよ。」と、包みを渡してくれました。中を見ると、新品のネクタイとカッターシャツが入っていました。

大将はお祝いだとは一言も言いませんでしたが、その気持ちが嬉しくて、鼻の奥がツンとしました。厳しさも優しさも教わった出来事でした。あの頃叩きこまれた料理という職人の世界の厳しさ。理不尽に思うことも多々ありました。しかし歳を重ね、自分が会社を興して、部下を持つようにもなってみると、見えてくる真意があります。時代が変わっても、変えてはいけない心がある。いつか分かる時が来ると信じ、若い世代を育てることを、私たち大人が諦めてはいけないと改めて思いました。

H24.1.27

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