第15回 ~働くことの意味を見出す~

こんにちは、筧です。前回のコラムでホームレス就職支援に携わることとなった経緯を綴りました。支援に特化した組織として確立したものでもなく、自社の事業の傍らスタートした、本当に細々とした小さな活動でした。公園の炊き出しの横で始めた採用面接。採用した人には、「うちで頑張る気があったら、会社までおいでね。」と、名古屋から国府宮までの片道切符代を入れた茶封筒を渡しました。もちろん、それっきり音沙汰がない人もありました。

選択肢が与えられて、実際の行動に移せるかどうかが、ひとつの雇用基準となりました。会社を訪ねてきた人には、寮に入居させ、まず自社の中での単純な軽作業に就いてもらいました。続けて出勤ができ、マナーや仕事の能力にも及第点があげられる人には、慣れてきたところで派遣先での仕事も徐々に紹介していきました。

ある日、事務所にいる私あてに一本の電話がありました。相手は数日前に公園で声をかけたAさんでした。彼は涙ながらに、「すみません、社長。頂いた切符代をその日の飯代に使ってしまいました。」と言いました。そして躊躇するように無言になったあと、「・・・でも、やっぱり働かせてもらいたくて、封筒の裏のゴム印を見て電話したんです。会社まで行きたいけれど、もうお金がなくて叶いません。恥ずかしい頼みですが、僕を迎えにきてもらえないでしょうか?もういっぺんチャンスを下さい。」と電話口で絞り出すように言いました。ぐちゃぐちゃに泣きながら、恥をしのんで電話をしてきた彼に心を動かされ、その日のうちに車を走らせ、彼を連れ帰りました。

弊社に籍を置くことになったAさんは、前職でのライン経験も活かして、ひたむきに仕事に取り組みました。そんなAさんに「お前は頑張るなぁ。なんでそんなに一生懸命やれるんだ?」と訊いたことがありました。すると、彼は笑って「仕事ができるのがありがたいですから。それと、社長は給料袋を渡すとき、いつも『今月も働いてくれてありがとな。』って言ってくれますよね。僕にはそれがすごく嬉しかった。一度は駄目になった僕だけど、来月もまた『ありがとう。』って言われたい、言ってもらえるようにもっともっと頑張ろうって思うから、やれるんですよ。」と話してくれました。

正直、彼の仕事ぶりの裏にそんな動機があったなんて、当時の私は思いもしませんでした。自分が頑張ったことに対して、ありがとうと言われる喜び。自分が誰かの役に立っているという肯定感と達成感。給与という金銭的な報酬だけでなく、人が自ら働くという原動力には、仕事を通して社会や誰かと自分が繋がっているという実感なのだと、そのことを改めて感じたのが彼の言葉だったのでした。

                                             H23.7.14

このページの先頭へ

株式会社リバースは愛知県稲沢市から人材派遣・人材紹介などあらゆるサービスを全国にご提供しています。