父亡きあとに思うこと

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父亡きあとに思うこと

元気なころの父は、私の仕事については、とにかく反対するばかりで、「どうだ?」などと訊かれることもありませんでした。そればかりか、私の息子たちに「将来はお祖父ちゃんのように公務員になるといいぞ。商売なんか不安定だし、お父さんみたいに嫌でも長時間働いて苦労するだけだからな」と口癖のように言っていました。私としては、父と違う道で私なりに頑張っていることをなに認めてもらえないことに、寂しいと感じる時もありました。
その父が病室で、お前の会社のことを知人を回って頼んでおいてやるからと言った時は、正直本当にビックリしました。そんなことは会社を始めて二十年近くなりますが、ただの一度も言われたことがなかったので。思うように身体が動かせなくなってから、気がかりになったのでしょう。その時ふっと揺れる親心が垣間見えたように思いました。
母はというと、何度も父子の間を取り持つように「お父さん、口ではああ言ってるけれど、あんたのことそう悪く思ってないと思うよ」と私を慰め、私が元気がないと「どうも会社で気になることがあるらしい」と、こっそり父にも報告していたようでした。それでも知らん顔を通していた父。
ここまで事業で紆余曲折あってもくじけずにやって来られたのは、そんな父への対抗意識が大きな要因になっていたように感じます。ここで会社を潰したら父にそれ見たことかと言われるのが悔しいから、なにくそと歯を食いしばって再起をかけたあの頃。私を甘やかさずに一貫して突き放していたことが、必ず軌道に乗せてみせるという原動力になっていたと、送り出してようやく思えるようになりました。
また、父を身近に頼れない分、得たものも多くありました。経営の相談をする親代わりのメンター、腹を割って語り合える経営者仲間、右腕になって支えてくれた年上の部下。仕事の上でのかけがえのない人達との深い付き合いが始まったのも、そういった繋がりを外へ求めていった結果、開拓することができたご縁の数々です。
父があとに残したものはお金や物や分かりやすい愛情ではなかったけれど、私が自立してやっていける基盤を作ってくれました。そのことがどれだけ大きな財産となったか、少しずつ理解できるようになったこのごろです。
その感謝を胸に、残された母や家族を父の代わりにこれから自分が守っていくという新たな責任と向き合って生きる。父から託された最期の課題を、男としてきちんと引き受けていきたいと思います。

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