内観を通じて気付いた母の愛情

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内観を通じて気付いた母の愛情

皆さんは「内観」というものをご存知でしょうか。内観は仏教の修行法の一つである「身調べ」を元に、創始者の吉本氏が宗教色を取り除き、自分を見つめ直して、他者によって生かされている自分に気付くという自己洞察のための修養法です。日本発祥の心理療法として「内観療法」と呼ばれ、森田療法とならび海外でも広く知られるようになりました。
内観は全国約三十カ所余りに設けられた「内観研修所」に一週間滞在して行う方法が一般的です。部屋の片隅の仕切りで囲んだ半畳程度の空間に楽な姿勢で座って、朝六時から夜九時までトイレと入浴と寝る時以外はその中で過ごして、生まれてから現在に至るまでの自分について掘り下げていきます。
食事も衝立の中でとります。小学校低学年・高学年と年代別に、家族や身近な人に「してもらったこと」「して返したこと」「迷惑をかけたこと」について思い出していきます。一、二時間おきに面接者が回ってきて、「だれに対する、いつの自分を調べましたか」と思い出したことの確認があります。特に母親との関わりを回顧することに重きを置きますので、私が初めて内観を体験した時も、まず母にしてもらったことを掘り下げていきました。
はじめはなかなかうまく思い出せず、ただ時間ばかりが経っていきました。煮詰まっているころに、巡回の面接者から「たとえば、小さいころに熱を出して、寝ずに看病してもらったことなどありませんでしたか」と口数は少ないけれど、ヒントとなる一言をもらって、それを糸口にまた思い返していきます。そのうち、遠足の前夜から準備をして作ってくれたお弁当のことなど、自分がしてもらってうれしかった出来事を思い出しました。それから自分ではありがたみを感じていなかったけれど、母が私のために嫌な顔もせずにしてくれたことの数々が、あれもこれもと湧き出てくるようになりました。
面接者から次のテーマ「して返したこと」を調べるように言われ、思いを巡らせます。しかし、子どものころにした家の手伝いにしても後でもらうお駄賃目当てだったり、見返りなしで母にして返したことをひねり出そうとしても全く出て来ません。母親の無償の愛の前に、感謝しているつもりでしたが何もできていなかったことに気づき、がく然としました。そして、反抗期で荒れていた時にどれだけ迷惑や心配を掛けたかも身にしみて、腹の底から申し訳ない気持ちでいっぱいになりました。
研修所で行う集中内観は、二度参加したのち久しく行なっていませんが、今でもプチ内観を日常のなかに取り入れています。気持ちや考えを整理し、慢心しないブレーキとなる大事な習慣です。

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